保険や投資信託などの金融商品を薦められたけど、買うべきか迷ったことはないでしょうか。
かんぽ生命の不適切販売問題まではいかなくとも、銀行や保険など金融機関に対して、顧客のリテラシーの低さを逆手にとって商品を販売しようしていると感じることがあるのではないでしょうか。主体的な意思を持って接し、適切なアドバイスをもらうために、お金の知識が必須かと思います。
概要
本書は、投資初心者向けに金融商品を紹介した本です。積極的に投資をして儲けようというより、おかしな投資法や金融商品に騙されない『投資賢者』になるのが目的です。
内容を一言でまとめれば、投資した後はその成果には興味を持たず本業に集中する「オートマチック投資に向く金融商品」となるでしょうか。学ぶべきは自分でコントロールできるコストや税金で、運用コストが安い商品を探し、税金の安く済む運用方法を見つけるエッセンスが書かれています。章立ては以下の通り。
- 投資信託を解剖する
- 個別投資を解剖する
- ローンを解剖する
- 保険を解剖する
- 得する金融商品の税制を解剖する
章立てを見てもらえばわかりますが、幅広く金融商品が取り上げられています。1〜2章が投資信託や株式や債券などさまざまな「投資商品」、3〜4章がローンや保険などの「支出型商品」、5章がNISAやイデコなどの「税制優遇商品」です。
各金融商品について、罠を見抜くため「巷でよく聞く売り文句」「一般論で言うと」「もう少し深掘りしてみると」「解説」で、図やイラストも用いて、売り文句と中身のギャップがわかりやすく解説されているのが、本書の特徴です。
騙されない『投資賢者』
世に数多ある金融商品は、それぞれがメリットをアピールして買わせようとしてくるが、確実に儲ける「お宝商品」はなく、自分がコントロールできるコストや税金を学ぶべきという考えに同意し、元銀行員としてこの考えを普及させていきたいと思いました。リスクを積極的に冒して、投資や投機をしたい場合はまた別です。
金融機関も営利企業で利益を追求することが求められているので、利益を出すために手数料を高い金融商品を薦めるのは、普通のことかと思います。なぜならば、消費者が知らない分を補って手数料をいただいているからです。だからこそ、金融商品の知識をつけることで、手数料を抑え得する余地が大きいと思います。
金融機関の売り文句と、商品の中身のギャップの一例として、投資信託で人気の高い「毎月分配型投資信託」について抜粋します(本書ではもっと詳しく説明されています)。
- 分配金が、毎月支払われる投資信託
- はじめて金融商品投資をする人に勧められるケースが多い
- 毎月ほぼ一定のお金を受け取れるので、シニア層に人気
- 分配金をもらうことにメリットなし
- 分配後の再投資では複利効果が低減される
- コストが無駄に高い
毎月分配金が支給され、お得に感じるかもしれませんが、分配金の一部は自分が支払った元本を切り崩しているので、基準価額(投資信託の値段)も下がります。さらに、金融機関側からすると毎月分配する手間が増えるので、その分コストも高くなります。
さいごに
本書は、「有望な金融商品」と「ボッタクリな金融商品」を切り分けることが意図されているようです。金融機関や(金融機関と利害関係のある)ファイナンシャル・プランナーなどに、金融商品を薦められたときに役立つと思います。
最後に印象に残ったフレーズを引用しておきます。
そもそも市場にお得なお宝商品なんてないのです。だって、買う側にとって確実にお得な金融商品があるとすれば、売る側はわざわざ損を承知でその値段で売っているということですから。
強欲な金融市場の人からカモにされ、ボッタクリな金融商品を買わされないために、お金の知識が必要です。自分でコントロールできる税制優遇商品(iDeCoやNISA)からメリット・デメリットを理解した上で、積立投資をはじめてみるのはいかがでしょうか。