雇用情勢を示す重要指標のひとつ「失業率」は、どのように算出されているのだろう?
失業率の基となっている「労働力調査」について調べ、BIツールを使ってデータで可視化してみました。この記事では労働力市場の規模感を抑えることを目的に2019年の断面データを全体(15歳以上の人口)から分解しています。
- 労働力調査は、国民の就業及び不就業の状態を明らかにすることを目的に、総務省が毎月実施。
- 15歳以上の人口は2019年平均で1億1,092万人。
- 労働力人口は6,886万人、労働力人口比率は62.1%。
- 完全失業者は162万人、完全失業率は2.4%。
- 役員を除く雇用者は5,669万人で、うち正規の職員・従業員は3,503万人(61.8%)、非正規の職員・従業員2,165万人(38.2%)。
労働力調査とは
労働力調査は、国民の就業及び不就業の状態を明らかにすることを目的に、1946年9月から、毎月実施されています。失業率など調査結果は、雇用対策や景気判断等のために利用されています。
- 調査機関:総務省統計局
- 調査対象:全国全世帯から無作為抽出した約4万世帯に居住する15歳以上の約10万人。
- 公表時期:月次。調査月の翌月末。年平均結果を収録する「労働力調査年報」は調査年の翌年5月刊行。
- ポイント:景気に対し遅行的に動く。季節的に変動する要因があるため、毎月の推移を連続的にみる場合は、原数値ではなく季節調整値を用いる。
失業率は労働力調査では「完全失業率」と呼ばれます。ここで簡単に用語を整理しておきます。

- 従業者:調査機関中に収入を伴う仕事を1時間以上した者。
- 休業者:仕事を持ちながら、調査週間中に少しも仕事をしなかった。雇用者で賃金の支払いを受けている又は受けることになっている者。自営業主で仕事を休み始めてから30日にならない者。
- 完全失業者:仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった。仕事があればすぐ就くことができる。仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた。
- 完全失業率:「労働力人口」に占める「完全失業者」の割合
- 労働力人口比率 : 15歳以上の人口に占める「労働力人口」の割合
その他労働力調査で出てくる用語の定義は、以下リンクをご覧ください。
ここから、労働力調査対象全体の15歳以上の人口、労働力人口・完全失業者、就業者・雇用者の順にデータを見て、規模感を把握していきます。
15歳以上の人口動向

15歳以上の人口は、2019年平均で1億1,092万人です。
男女別では女性が51.7%と若干多いです。特に60歳以降の女性比率が高くなっています。女性のほうが平均寿命が長いからだと考えられます(2018年の平均寿命は女性が87.32歳、男性が81.25歳)。
年代別でみると、55歳以上で46%と半分近くになっています。ボリュームゾーンは、40〜54歳で男女計2709万人(24%)、次いで65~74歳で1742万人(16%)です。
労働力調査は、標本調査なので数値をみるときに誤差があることを頭に入れておく必要があります。10万人を標本調査して、1億人を推定しているので当然ですね。具体的には下表の誤差があります。

15歳以上の人口であれば、33万人(11,092×0.3%)の誤差がありそうです。詳細は下記PDFファイルをご覧ください。
参考
標本抽出方法,結果の推定方法及び推定値の標本誤差総務省統計局
労働力人口と完全失業者動向

労働力人口は、2019年平均で6,886万人で、労働力人口比率は62.1%(6,886÷11,092)です。労働力人口比率を性年代別でみると、男性25歳〜59歳で90%超、女性25~29歳で85%と高くなっています。
15歳以上の人口1億1,092万人を、労働力人口と非労働力人口の内訳で分解すると、就業者が6724万人(60.7%)、完全失業者が162万人(1.5%)、通学が599万人(5.4%)、家事が1,327万人(12.0%)、その他が2,270万人(20.5%)です。
完全失業者は、2019年平均で162万人で、完全失業率は2.4%(162 ÷ 6,886)です。性年代別でみると、男性が96万人(完全失業率2.5%)と多く、男女とも20代の完全失業率が3.5%超と相対的に高くなっていることがわかります。
就業者と雇用者動向

就業者は、2019年平均で6,724万人で、内訳は雇用者6,004万人(89.9%)、自営業主531万人(8.0%)、家族従業者144万人(2.2%)です。
- 雇用者 : 会社、団体、官公庁又は自営業主や個人家庭に雇われて給料・賃金を得ている者及び会社、団体の役員
- 自営業主 : 個人経営の事業を営んでいる者
- 家族従業者 : 自営業主の家族で、その自営業主の営む事業に無給で従事している者
役員を除く雇用者が5,669万人で、内訳は正規の職員・従業員3,503万人(61.8%)、非正規の職員・従業員2,165万人(38.2%)です。非正規の職員・従業員を分解すると、パート1,047万人(18.5%:役員を除く雇用者に対する割合)、アルバイト472万人(8.3%)、契約社員294万人(5.2%)、派遣社員141万人(2.5%)、嘱託125万人(2.2%)、その他86万人(1.5%)となります。
役員を除く雇用者を月間就業時間でみると、月141〜160時間が1,272万人(19.3%)、月161〜180時間が1,103万人(16.8%)と多くなっています。法定労働時間限度、1日8時間で月20日〜22日で考えると160時間〜176時間なのでボリュームゾーンになっています。ただ、200時間超の人が1,124万人(17.1%)いることもわかります。
契約期間でみると、無期契約3,728万人(66.1%)、有期契約1,467万人(26.0%)、その他443万人(7.9%)です。
産業別でみると、製造業1,063万人(15.8%)、卸売業・小売業1,059万人(15.8%)、医療・福祉843万人(12.5%)が多いです。産業分類の具体例は下記PDFファイルをご覧ください。
参考 労働力調査産業分類内容例示(日本標準産業分類第13回改定による)総務省統計局
職業別でみると、事務従事者1,319万人(20.0%)、専門的・技術的職業従事者1,174万人(17.8%)、生産工程従事者907万人(13.8%)が多いです。
職業分類の具体例は下記PDFファイルをご覧ください。
参考 労働力調査職業分類内容例示(日本標準職業分類平成21年12月改定による)総務省統計局
さいごに
「失業率」について、背景となる調査、数値について理解できたのではないでしょうか。労働市場の基礎数値をザッとみることで基準の数値を持つことができ、ニュースに触れる際、数値比較でき、より理解できると思います。
今回はじめて、政府統計ポータルサイトe-StatデータをTableau(BIツール)で可視化してみました。データ粒度を自由に変えられない点はありますが、様々な軸で集計されたデータを簡単に取得でき、便利でした。Tableauで作成したダッシュボードは公開しているので、記事中の細かい数字の確認などにご覧ください。
次回は「有効求人倍率」の基となっている「一般職業紹介状況」について調べ、データで可視化します。